ブルーピリオド(7巻)を読んだ

発売日何時だよって?
いやいや。この漫画読むのにめちゃくちゃ体力と気力使うんすよ。
ようやっと読む決心がついたので読みました。

晴れて藝大受験に合格したヤトラだったが、そんな彼に襲いかかるのは「才能ある周囲の人間」「経験・実力共に人よりも遥かに少ない自分」「今までの自分のやり方を捨てろという教授陣」だった。
ヨタスケくんが、ある教授にチクリとヤトラの絵が刺された際の表情を見て、「矢口さんって意外と自己評価低いのかな」と思うシーンがあるんですが、そうなんです。ヤトラは自己評価が低いんです。
いつだって彼は「才能」と「経験値」に立ち向かってきた、反骨心溢れる人間というか……。
ギッタンギッタンにぶっ叩かれて心折れてからが本番、みたいな。
それがまあ、「俺の絵で全員殺す」になり、(私が)大泣きした回に繋がるわけです。
そんなヤトラに対してヨタスケくんは「僕より絵が下手な教授の言葉なんかにショックを受ける必要なんかないのに」とエグい感情持ってるわけですよ。
直接言ってやってくれよヤトラに。
ヤトラはヨタスケくんを天才だ、そして俺はその天才に「嫌い」とか「うざい」とか負の感情ではあるけれど視界に入れられている存在だと認知しているのでそれだけできっとヤトラは戦える。

でもそうはならんのよな

「受験絵画」を捨てろ、なんて、絵を初めて1年のバリバリの素人が言われたら「お前が1年掛けてやってきたこと、藝大では通用しねぇから」って言われてるようなもんだし、その上「君、どんな絵描いてた子だっけ」なんて心折れるやん。ポキッと。ヤトラ元気だせ。
向上心のある子だから「やったことがないこと」にチャレンジして「楽しい!」という感情を抱けても、講評で失敗するし……。
また蕁麻疹再発しない?

ヤトラ母が、小学生向けのお絵描き教室のアルバイトチラシをヤトラに渡すシーンはもう泣くしかなかった。
「たのしいお絵かき」が出来ないって静かに涙を流すヤトラに、心を打たれた。
「早朝の渋谷が青かった」のを、絵にして絵画の世界にどっぷり浸かったヤトラが、心を動かされる「なにか」に出会えない現状。
つら。しんど。

そんな心ポッキリのヤトラに発破入れてくれたのがパティシエの学校に進学した恋ちゃんと藝大受験落ちた桑名さん。
ヤトラの話をただ静かに聞いて「辞めんなよ」という恋ちゃん……恋ちゃんは土方の仕事しながら学校行ってるんだけど、学校に行く決心ついたのがヤトラの存在があったからだから、なんも出来ないしなんもアドバイス出来んけど入学1ヶ月で負けんな!て静かに静かに背中支えてくれてるみたいで良かった。
その後早朝の渋谷が見開き2ページで描かれてるんだけど、もちろん漫画なのでカラーじゃないわけよ。
だからこそ、この早朝の渋谷、ヤトラには今何色に見えているんだろう。
まだあの日心を動かされた青色なんだろうか……と不安に思う。
青色だといいな……ヤトラ、早朝の渋谷は青いか?
一方で桑名さんは、経験と努力がヤトラよりも多いけれど浪人してしまった身からの目線でヤトラを励ましてんの。
桑名さんのお姉ちゃんも1年時に「受験絵画を捨てろ」って言われて悩んでたから、ヤトラもそうなんでしょ?と。
自分が落ちてヤトラが藝大受験合格したのは自分と違って変化を恐れないからだよ、なんだってやっていいんだよ、自分の人生自分のものなんだから。と語りかけるの。
それは講評でいい評価貰ってそこから変化することを恐れた桑名さん自身にも語りかけるセリフで、桑名さんはその後油絵から彫刻に転科する。がんばれ桑名さん……!

恋ちゃんと桑名さんの言葉をよく噛んで飲み込んだヤトラは予備校の先生のセリフを思い出すんだけど、それが「まずは、自分が何を好きか知ること。そこから始めましょ」っていう原点に戻るワードだったのがすごく良かった。安心した。
焦って闇雲に突っ走ってもいい事ないし。
「自分は人より遅れている」ってことを、素直に受け止めて焦らずに自分の心を殺さないようにってのが。
また蕁麻疹で倒れたら怒る。悲しくて泣いちゃうぞ。
ヤトラが「早朝の渋谷」みたくまた心を強烈に動かされるなにかを見つけたり、好きなものを見つけて自然と筆が動くような、「描きたい」というパワー溢れる男になることを願ってる。
そんで、その溢れるパワーで「全員を殺す絵」を描いてやれ!