罪の声をみた

観終わったあとの感想が「苦しい」なんですけど……。

食品に毒物とか言われるとわたしはパラコート連続毒殺が出るけど罪の声の元ネタはグリコ・森永事件ですよね。
パラコートは「飲む人」も「善き人」ではない(かなり悪い言い方だが「自業自得」)ところが「人間」を感じられて好きです。
好きなんて言ったら人間性疑われるな……。でもこれ「仕掛けた人」も「掛かった人」も「模倣した人」もみんな、あぁ、人間だなぁ!て思えてほんとに好きなんです……。
……まぁ、ちょっと前にTwitterでRT回ってきた「お菓子の個包装無くしてエコに!」ってやつは毒物混入知らないおこちゃまの生温い意見としてスルーしたけど若者が大好きな星野源がキャストにいるからこういう経緯で今包装過剰とも言える状態なのよってのが伝わるといいですね。
……伝わるかなぁ???


さて映画の内容。
グリコ・森永事件における子供の声を録音して指示を与える〜の子供が大人になって自分が片棒かつがされた事件について調べていく……っていう元子供が星野源(曽根)なんですけど彼の苦悶の表情とても良いですね。
あとテーラー役なのでスーツがとてもとてもとてもGood。
テーラーが肩から提げる(?)メジャーはどうしてあんなにも「癖」を擽るのか。
あと小栗旬の「目」な。
取材の先にいる曽根に辿り着いてからの小栗旬がかつての子供たちに向ける目が良い。
社会部からドロップアウトした彼が、記事を埋めるためではなく、今度は被害者に寄り添うためにと戻ったあとも取材終了後の「終わり」を見詰めていた目がとても良かった。
あとついぞ身代金を受け取らなかった犯人グループは何を目的に犯行を起こしたのかのひとつの説としてあがってる株価操作を採用してるのでかなり取っ付き難いんだけど結構丁寧に追ってて良かった(その分長いな……と思うかもしれんが)。

犯人グループに曽根の母が関与してて、声を録音したのは犯人グループではなく母の協力によるものだった……てのがわかった時の母と息子の2人きりのシーンとイギリスに飛んでた首謀者である曽根の叔父と真相を確かめに行った小栗旬のシーンがセリフの繋がりで交互に映されてたんだけど、叔父と小栗旬は「追ってきた犯人をようやく見つけて推理の答え合わせをする」みたいな感覚なのに母と息子のシーンはとにかく苦しい。
「お母さんは息子の声が犯罪に使われることに対して何も思わなかったの?録音をしていた時、僕のことは考えなかった?」って聞くシーンがも〜苦しいこと苦しいこと。
学生運動について未履修(資料とかそういうの)なので当時の熱とか勢いとか全くわからないんですけど、犯人グループが何故今回この事件を起こしたかの動機が学生運動当時の警察やマスコミへの怒りとか憎しみとか心のどこかに引っかかっていた火種が「奮い立ったから」ってのが……。
動機はちょい「薄くね?」と思わないことも無いが(なんせ学生運動とか知らないので)再燃して行動に移した理由が「奮い立つ」はかなりアチィなと思った。
その人にとっての正義だったから奮い立って起こした事件だけど結局不幸になった人が沢山でただけで志したより良い日本には全くなってない上首謀者は日本でてイギリスで暮らしてんだもんなぁ。
この「奮い立った」叔父へのアンサーが「これから先、社会にどんな目に合わされたとしても僕はおじさんのように恨むことはしない」ってのも……。
いやいい事です。
子供や奥さんに刃が向いてもきっと曽根は「奮い立たず」に自分を何とか説得して誤魔化して生きていくんだろうな。
奮い立たずに、誰も恨まずにが「正しい」かもしれないけどそんな熱のない人間はどうなのかな、とも思ったエンドでした。