ベルファストをみた

観てきた。
老夫婦のセリフが少年でも分かるように優しい言葉で渡されるのがじんわり来てよかった。



ベルファストで生まれ育った少年バディはご近所さんみんなが顔見知りで、町の道路はみんなの遊び場ってくらいみんなが仲良し、平和な世界で映画を楽しみ、サッカーや勇者ごっこで遊んでいたところをプロテスタントの暴徒に町が襲われて、争いでピリピリする中日常を送るっていうストーリー。
町からカトリック信者を追い出そうとする人、町から離れる人、そっと見守る人、色んな人がいる中バディの家族やその親戚たちは静観しつつも、宗教は難しくて、どっちが正義でどっちが悪とかはないんだよ。
言葉が通じないのは聞く耳を持たないからなんだよ、と朝ごはんやバディの宿題を見ている日常の一風景で寛容の態度を貫いていたが、過激派に引っ張られてバディが暴動に参加させられた時に、町から出たくない、ここは子供の頃から一緒にいた人達が沢山いて思い出があちこちに染み込んでいるからと街を出ることを反対していたバディのママが遂に「もうこの町にいる意味は無い」と背を向けるシーンがとても辛かった。

大人である母親が、今よりいい給料、今よりいい住居、争いのない土地を天秤にかけても町を出ないとベルファスト固執していたのが、たった一度子供が危機に瀕しただけでもうダメだ、と振り切るのが親なんだなぁ、と思ったし、子供のバディは友達がいるし親戚がいるし祖父母がいるし好きな子がいるし、宿題もあるからロンドンになんか行きたくないと泣き出すシーンは、理由が大人の私からするとそんな瑣末事でこんな町に固執することは無いと思ってしまう。けどそれがバディの世界なんだよな、母親もバディもそれだけ大事な土地であるベルファストを出ざるを得ない状況になってしまったのが悲しい。

町を出る前にバディが好きな女の子にお別れの挨拶をしに行くんだけど、お花を渡してまた帰ってくるね。と緊張からか素っ気ない態度で別れてしまうのが可愛かった。
その後お父さんに、バディの家はプロテスタントだけど、カトリックのあの子と結婚できるかな?て訊ねて、お父さんが、あの子がカトリックでもヒンドゥーでも反キリストでも思いやりと優しさがあればきっと大丈夫だよと返すのも良かった。
その後、「待って?そうなるとお父さんも懺悔に行かないとダメ?」と茶目っ気出すのも良かった。

ラストはバスに乗ってベルファストを出ていくバディ一家をおじいちゃんが亡くなって1人になったおばあちゃんが、離れた場所から見送るんだけど、「そのまま振り返らず真っ直ぐ行きなさい」とつぶやくシーンで泣いてしまった。
暴動でピリついてる町にまだ仲のいいご近所さんや親族は居るっていっても、交流の多かった家族が一人ぼっちになった自分を置いて町を出ていくの辛いだろうに、町を出る決断を受け入れて見送るの強すぎる……。
脅しと暴力、鎮圧のために町を見張る軍隊に日常が侵食されながらも、家族のために沢山考えた親や周囲の人たちの変化だけ見るとしんどい映画だけど、バディの世界も混じっているから面白い映画やショーを楽しんだり、好きな子に追いつくために勉強を頑張る変わらない日常もあってそんなに見てて辛い映画ではなかった。
まあ悲しいは悲しいが。

バディの家族のようにみんなが寛容の心を持てばいいんだろうけどね。
私? いや〜無理ですね!!
信仰とかその辺はマジでお前の神はお前だけの神、私の神は私だけの神って感じだけど努力が足りないとか話を聞かないとかそういうのは受け入れられない。

だから争いはなくならないんだなあ!
適当なオチで〆ようとする松本でした。
いい映画なので時間あれば見に行って欲しいっすね。