ザ・メニューをみた

難しかった。
シェフが言わんとすることも、まあわかる。
美味しいご飯が作りたくて、それを食べてもらって美味しい!って言ってほしいだけだったが、美食家に取り上げられてあれよあれよと祭り上げられ、自分が頑張って作るご飯は金持ちの腹にしか入らないし、説明しても聞いてない、前回何を提供したかも覚えてもらってない。
だから「食べずに味わえ」なんだろうな。
ただ食ってるだけなら、町の庶民向けレストランで色んな客の満足そうな顔を見ていたかったのに、その未来を潰されて島で金持ち相手に飯を作る毎日。

その復讐がどエグい。

そこまで頑張るか…執着がすごい。
主人公はそんな殺人メニューに巻き込まれた一般人。
シェフに客(シェフたちを雁字搦めにした奪う人たち)として死ぬか提供者(そんな奪う人たちの被害者)として死ぬかの2択を迫られ、最初こそ提供者として渋々言うことを聞いていたが、シェフの抱える願望と現状の矛盾を突いて上手いこと1人逃げ出すんだが、その流れが最高だった。

シェフがラストのデザートを出す前に、必死に逃げることも出来たのに誰もそれをしなかった。お前たちは最早共犯者だ。みたいなことを言うんだけど、それってきっとシェフにもブーメランとして刺さってるよね。
シェフだって、島に閉じ込められてご飯を作るのが嫌なら全て捨てて町の食堂でひっそり作り続ければ良かったんだ。
だからシェフも客もみんなで死ぬんだなぁ。
主人公は最後まで助かることを諦めなかったから、シェフのメニューにケチをつけて、私が食べたいものはコレ、シェフのあなたは愛情込めて作って!と。
シェフも自分がゼロから組んだ計算されたメニューじゃなくて、1人のお客様が注文したメニューを作るのが楽しかったのか、目を潤ませながらご飯作ってて、なんかそれまでのシーンはシェフの要望通りに客が従わないといつ殺されてもおかしくない、なんてピリッとした空気だったのに、そのシーンだけ美味しそうなチーズバーガーとポテト、お客様は満足するだろうかと見つめるシェフ、一口食べて思わず笑みが零れて美味しいありがとうと伝える主人公がいて、美味しいご飯を食べるってこんなにも幸せなことなんだってのが……。
いやほんとに、チーズバーガーがまじで美味しそうで……。
スーシェフの料理にも美味しいと伝えるシーンがあるんだけど、その時にスーシェフが「もっと早くにその言葉を聞けていれば……」って泣いちゃうんだよな。
食材がどうたら、盛り付けがどうたらも大事かもしれないけど一口食べて美味しかったら「美味しい」って言わないと、作り手には伝わらない。
とはいえとんでもない復讐劇だった……。
マシュマロのポンチョ、チョコレートの帽子、言葉だけならとてもファンタジックかつ美味しそうなのに、ミッドサマーのように火あぶりさらて焼きマシュマロと焼き人間〜ホットチョコレートを添えて〜になっちゃってオーララ……てなっちゃった。

予告で期待してたクソやばサイコパスみを浴びることは出来なかったが、主演のアニャの目がめちゃくちゃ良かったので観てほしい。